新潟市内では、11月~12月にかけて、街路樹の剪定が至るところで行われます。
皆様も剪定された街路樹を目にすることがあると思いますが、新潟ではほとんどの街路樹が切詰剪定により棒切れのようにされてしまいます(かく言う弊社も、切詰剪定を行っている一業者です)。
市の予算も十分ではないため、路線ごとに2~3年に1度の剪定頻度に留めることが多く、大きく伸びた枝を切り詰めては、また数年で元に戻る、それをまた切り詰める。この繰り返しになってしまっています。
また、街路樹剪定をしていると、沿線にお住いの方々から「落葉が家の前に溜まって困る」といった苦情を伺うこともしばしばあります。
皆様は街路樹に対してどういった印象をお持ちでしょうか?
金食い虫で邪魔者・・・否定的に考えておられる方も少なくないかもしれません。
それでは、海外における街路樹の立場はどうでしょうか。
海外では、多発する自然災害の背景にある気候変動への取り組みとして、街路樹を大きく育もうという戦略を進める都市も増えているそうです。
温暖化やヒートアイランド現象の激化を受け、欧米の多くの都市では道路だけでなく都市全体で「樹冠被覆率」を増やす取り組みが進んでいます。
この「樹冠被覆率」とは、地面に対する樹冠(枝葉の茂っている部分)の面積の割合を示したものです。
日本では伝統的に、緑化度を示す指標として「緑被率」が用いられてきました。緑被率は芝生や中低木が植えられている場所も含みますが、樹冠被覆率にはそれらは含まれません。あくまでも高木の樹冠で覆われている部分の面積を示しています。
街路樹は、この樹冠被覆率を高める上で、最も重要な要素として位置づけられています。
樹冠が広がると、強い日差しを遮る範囲が広がり、緑陰効果が大きくなります。
このほかにも、雨水の浸透による都市洪水抑制、土壌水分の蒸発による地表面の温度低下(ヒートアイランド現象緩和)、心理的ストレス緩和、生態系ネットワーク機能など、樹冠の拡大によって得られる効果は多岐にわたります。
※以前は、都市における緑の機能と言えば、排気ガス(大気汚染物質)吸収効果がよく挙げられました。
しかし、実際には街路樹等が吸収・固定できる物質量は決して多くありません。
このため現在では、前述したような樹冠及び植栽基盤による機能の方が重要視されているようです。
先に述べた樹冠被覆率向上のため、海外では街路樹を大きく育てる・新たに植える・樹木の成長を見越した植栽基盤作り等に取り組む都市があります。
これは次々と樹木の伐採が進み、街路樹も大幅に切り詰められてしまう、日本の現状とは真逆の動きです。
もう一度、都市にふさわしい街路樹のあり方とはどういったものなのか。官民双方の視点から、考え直す必要があるのではないでしょうか。
現在、新潟駅万代広場の整備工事が進められています。
“緑あふれ、人々が憩い、集うことができる居心地が良い空間”の確保を目的とした工事です。
これは、市民の皆様に、都市緑化について関心をもっていただく契機となり得ると思います。
弊社としても、あるべき都市緑化の創造に、微力ながら貢献していきたいと考えております。