コブシは、ハクモクレンに似た白花をつける、春を告げる花として親しまれています。
花の時期はとうに過ぎてしまいましたが、今回はコブシにまつわる伝説をご紹介したいと思います。
熊本県五家荘付近、ここには平家の落人の哀しい物語が伝えられています。
壇ノ浦の敗戦から逃れて、この地方に落ち延びた者たちがおりました。彼らはこの山奥に、安住の地を見出したかに思われました。
しかし、早春のある朝、彼らが目を覚まして辺りの山々を見渡すと、なんと無数の源氏の白旗があちこちにはためいていたのです。落人たちはなすすべもなく、今はこれまでと自刃して相果ててしまいました。
しかし、この源氏の白旗に見えたのは、実はコブシの花だったというのです。
コブシは東北地方では、田打ちの時期に咲くことから「タウチザクラ」とも呼ばれ、「コブシの花が多い年は豊作だ」とも言われます。
また、大きくならない「ヒメコブシ(シデコブシ)」は、狭い庭でも栽培できるため、早春の花木として人気があります。
今回ご紹介したコブシですが、同じモクレン科に、よく似た花(花弁が6つの白い花)をつける『タムシバ』があります。
これらの見分け方ですが、花の下に1枚葉を出すのがコブシ、花後に葉を出す(花が咲いている間は葉が出ない)のがタムシバです。
上の写真を見ていただくと、左の花の下に葉が1枚出ているのがわかるかと思います。この葉が、見分けのポイントです。