ススキはイネ科の多年草で、秋の七草のひとつに数えられます。
十五夜の月見には、ススキの穂と白玉の団子とは昔から欠かせないものになっています。それほど、日本人はススキとの縁が深いのです。
カヤで屋根を葺くことも、昔から行われてきました。
ススキは、『尾花(おばな)』とも呼ばれます。風になびく穂の姿を指して呼ばれたものですが、秋の風情を強く感じる名です。
また、前回のナデシコと同じく、万葉集に多く詠まれた植物でもあります(全43首)。
~ 道の辺(へ)の 尾花が下の 思ひ草 今更々に なにか思はむ ~
(道のほとりに茂るススキの下に咲く思ひ草。今更何を迷うことがあるというのか。)
この歌は作者不詳。「自分はもう迷わない。あなたの愛を信じ、あなたひとりを思っています。」という心情を逆説的に歌ったものです。
この『思ひ草』とは、ススキの根に寄生して咲く「ナンバンギセル」の事です。頭を垂れて咲く姿を思ひ草と表現した当時の人の感性には、思わず感心してしまいます。
あまり庭植えのイメージはないかもしれませんが、根が広がらないように根止めをすれば庭植えも可能で、庭石などに添えてやるのもなかなか風情があるものです。