花の詩vol.25『カエデ類』(カエデ科)

 皆様はカエデと聞くと何を思い浮かべますか?

 

 ひとつ有名なのは、カナダの国旗(サトウカエデの葉)でしょうか。カナダと言えばメープルシロップ。こちらはサトウカエデの樹液を煮詰めてつくられます。

 

 カエデ属は世界に約150種、日本にも26種が確認されている、我々にとって非常に身近な樹木です(右の写真はイロハモミジ)。

 

 カエデと言えば、やはりまず目が行くのが、この特徴的な葉の形でしょう。

 

  掌状に切れ込むもの(イロハモミジなど大多数)、複葉のもの(メグスリノキ、ミツデカエデ)、まったく切れ込まないもの(ヒトツバカエデ、チドリノキなど)と様々ですが、どれも葉が2枚ずつ枝に向き合ってつく(対生する)点は共通しています。

 

 

 カエデという名は、掌状に裂けた葉を『蛙の手』と呼んだのがカエデに変化した、と言われています。掌状の葉には、風や雨の抵抗を受け流し、葉の表面に溜まる水のはけを良くする効果があります。先ほど述べた葉が咲けないカエデでは、代わりに葉脈部分を深い溝状にして、排水効果を高めているそうです。

 

 また、カエデ類は秋になると紅葉で私たちを楽しませてくれる木でもあります。

 

 皆様はカエデの葉が赤く紅葉する理由をご存知でしょうか。秋が深まり気温が低下すると、根の活動が衰え、給水能力も弱まります。一方で気温の低下に伴い空気は乾燥するため、葉の水分は蒸散しやすくなってきます。

 樹木体内から水分が急激に失われるのを防ぐため、落葉樹は葉を維持することをあきらめ、葉を落とすことで低温&乾燥期間を乗り切ろうとします。そこで植物は、葉の柄の部分に『離層』を形成し水と養分の流れを遮断します。

 水と養分が断たれても、葉はしばらく光合成を続けます。しかし光合成によってつくられた糖は、ひたすら葉の中に溜まり続けます。この糖から、赤い色素である『アントシアン』がつくられるのです。

 対象に、葉内の葉緑体が機能を停止するため、緑色の色素である『クロロフィル』は徐々に消滅していきます。

 

 こうして緑が消えると、アントシアンの赤が鮮やかに現れ、カエデの葉は赤くなるのです。

 

 日中良く晴れて気温が上がり、夜に急に冷え込んで湿度が高いとき、紅葉が最も美しくなると言われています(盛んに光合成して糖をたくわえたところで急速に離層ができるので、アントシアンの量が多くなる)。

 

 今年の秋も、鮮やかな紅葉を楽しみたいものです。